弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第152回
中小企業も新会社法でメリット

前回、新会社法は、
これから起業する人にとって、
会社の設立が簡単になる
メリットがあると説明しました。

今回は、
中小企業にとってのメリットです。
うちは、中小企業だから、
会社法が新しくなっても関係ない
などということはありません。

中小企業の方が、
新会社法に関係あるのです。
中小企業では、社長1人で十分なのに、
無理に取締役を3人選任して、
監査役も選任しているはずです。
これまで、これらの登記は
取締役と監査役の任期が
商法で決まっていたことから、
取締役が2年毎、
監査役は3年毎に登記を
更新しなければなりませんでした。

しかし、
平成18年5月1日からの
新会社法では、
中小企業では、取締役を
1人選任すればよくなります。
取締役2人と監査役を
なくすことができるのです。
しかも、取締役の任期は
10年以内であれば
何年でもよくなりました。
取締役を自分だけにする場合には、
任期を10年と定めれば、
任期ごとに役員登記を
更新しないで済みます。

それから、これまでは、
破産手続中の人は
取締役になれませんでしたが、
破産手続中でも、新会社を作って
取締役になることもできますし、
破産手続中に知人の会社から
役員になって欲しいと
依頼された場合に、
取締役になることができます。

中小企業にとって、
新会社法のメリットは他にもあります。
新会社法では
中小企業の事業承継や
相続争い対策のために
新しい制度を設けました。
相続によって、
会社の経営に関係ない相続人に
株式が渡ってしまうことは
よくあることです。

これにより、
経営争いが起きることもよくあります。
新会社法では、
定款で、相続人に対し、
会社が株式を売り渡すよう
請求できる権利を定めておき、
実際の相続が起きたら、
株主総会を開いて、
3分の2以上の賛成を
得ることができれば
強制的に株式を会社が買い取る
ことができることとしました。

しかし、経営争いになる場合は、
株式が半数ずつのケースが多いので、
実際にどれだけ役に立つかはわかりませんが。。

その他にも、
株主から株式会社に株の買取を
請求する権利を定めたりすることもできます。
これは、株なのに、
出資金の返還を認めるのと
同じこととなります。
また、配当などについては、
これまで平等に扱うしかなかったのですが、
株主ごとに違う内容と
することもできます。
さらに、全株式を会社が
株主から強制的に買い取ってしまったりする
荒業を行なうこともできます
(ただし、これも株主総会で3分の2の決議が必要です)。

このように、新会社法は、
中小企業経営にとっても、
メリットのある制度を定めていますので、
利用する価値はあると思います。


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2006年5月2日(火)

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