弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第124回
相続した預金を下ろせない

人は、お金のためだけに
生きているわけではありません。
しかし、お金がないと暮らせません。
だから、生きているときには、
多かれ少なかれ、お金を持っています。
普通の人は、お金を全て
現金で持っているということは、少なくて、
当座使う以外のお金を銀行預金にしています。

そこで、人が亡くなったときに、
遺産として、銀行預金があるのが普通です。

ところが、
この遺産として残された銀行預金が
問題となることがあります。

というのは、銀行は、
預金の名義人が亡くなったと知った後は、
相続人全員の署名捺印のある
遺産分割協議書などがないと
預金を動かせなくしてしまいます。

これは、銀行が名義人が
亡くなったのを知っていたのに、
相続人の1人が預金を下ろすのを認めたため、
預金がなくなってしまったなどと
他の相続人から苦情を受けるのを防ぐためです。

それはそれで一理はあるのですが、
名義人が亡くなった直後に、
相続人全員の署名捺印が取れない場合もあります。

すると、それまで預金口座から
引き落とされていた
公共料金や住宅ローンの支払いは
できなくなってしまいます。
葬儀費用なども、
預金から出すのが難しくなってしまいます。

預金口座にお金があるのに
支払いができないという
困った状況になってしまうのです。

他の相続人の分まで下ろすことは、
他の相続人から文句が出るかもしれないけれども、
自分の分だけ下ろすというのはどうでしょうか?
これなら他の相続人から文句は言われなさそうです。

例えば、お父さんが亡くなり、
遺産として、銀行預金が3000万円残されました。
ABCの3人兄弟で、
Cは海外に行っていて
すぐに連絡が取れないとします。

法定相続分は3分の1ずつですから、
ABが自分の相続分1000万円ずつを
下ろすことができないかということです。

これに対し、銀行は、
ABの請求について、
預金を下ろすことを認めませんでした。

そこで、裁判となりました。
判決では、銀行とABは
どちらが勝ったでしょうか?


←前回記事へ

2006年1月17日(火)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ