弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第41回
1円起業は良いことだけではない

会社の借金や買掛金を
経営者個人が支払わなくて済む
株式会社や有限会社が
1円でも作れるということは、
会社を設立して起業をしようとする人にとっては
大きなメリットです。
しかし、世の中、よいことだけではありません。

そもそも、商法は、なぜ、
株式会社の資本金は1000万円、
有限会社の資本金は300万円としたのでしょうか?

それは、正に、これらの会社は、
会社の財産だけが、
会社の支払いに当てられるのだから、
少なくとも、最初は、
300万円なり、1000万円を用意させ、
会社の支払能力を確保させようとしたからなのです。

この最低資本金の制度がなくなってしまえば、
1000万円あるいは300万円も用意できないくらい
支払能力のない人に会社経営を認めることとなります。

したがって、経営者が
安易に会社を設立してビジネスを始めたけれども、
うまく行かないので
支払いを何の資力もない会社に押し付けて、
逃げるということも十分考えられます。

即ち、1円会社は会社を設立し、
経営しようとする人のモラルの低下を
招くおそれがあるのです。

また、1円会社は会社と言っても、
全く財産がない会社ですから、
いざというとき取引先は
代金を踏み倒される可能性があります。

しかし、今、
300万円なり、1000万円なりの資本金を定めていても、
実際は会社の中は空っぽで
差し押さえる財産はないという会社は多いです。

だから、僕個人としては、
1円会社を認めることで、
起業しようとする人が増えるのであれば、
デメリットがあるとしても
それでよいのではないかなと思っています。

しかし、これから、会社と取引する人は、
ますます、取引相手の資本金を確認し、
その他財産や取引先(売掛)などがあるのか
よく確認してから取引をする必要がありますので
ご注意ください。


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2005年3月3日(木)

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