弁護士・高島秀行さんの
読んだらわかる訴訟の話

第99回
判決は確定しなくても強制執行できる

民事裁判のほとんどは、
お金を払えというものです。
「貸したお金を返せ」や
「代金を支払え」は、もちろん、
契約違反があれば、「支払った代金を返せ」、
事故で人が亡くなった場合には
「それによって生じた損害を支払え」というように、
民事裁判では、理由は様々ですが、
お金の支払いを求めるものが多いのです。

原告が、勝訴した場合には、
以前説明したとおり、
「被告は原告に対し金○○円支払え」
という判決が出ます。

正確には、
被告は原告に対し金○○円支払え。
訴訟費用は被告の負担とする。
この判決は仮に執行できる。
という判決となります。

敗訴した被告は、判決に納得できなければ、
判決を受け取ってから
2週間以内に控訴することができます。

日本は、三審制をとっていますから、
控訴してもだめなら、
上告することもできます。

せっかく一審判決が出ても、
被告が二審、三審と争っているうちは
強制執行ができないとすると、
被告が負けるとわかっていても
控訴、上告をすることにより
解決を引き延ばすことが可能になってしまいます。

そこで、一審判決が出た場合には、
「この判決は仮に執行できる」
という仮執行宣言が付けられ、
被告に控訴、上告されて判決が確定しなくても、
勝訴した原告が
被告の財産に強制執行ができることとなっています。

そこで、敗訴した被告は、
控訴、上告と争っている間に
強制執行をされたくない場合には、
担保としてお金を供託し、
仮執行宣言に基づく強制執行を止めなければなりません。

一審で勝訴した原告が
仮執行宣言に基づいて
被告の財産に強制執行をした後に、
原告が控訴審で負けてしまったら
どうなると思いますか?

判決に基づいて強制執行したのだから、
返す必要はなく得することになる、
ということはありません。

控訴審で敗訴したということは
原告に請求権がなくなったということですから、
原告は強制執行によって得たお金を
控訴審で勝訴した被告に返さなければなりません。


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