弁護士・高島秀行さんの
読んだらわかる訴訟の話

第95回
親子、夫婦、会社と役員の財産は別

お金を貸したけど返してもらえない(貸金返還請求)、
物を売ったけれども代金を払ってもらえない(売掛金回収)
という相談を受けたケースでよく聞かれるのは、
「親は資産家らしい。親に請求できないか?」
「会社の代表者の財産を差押えできないか?」
など、実際にお金を貸した相手や
物を売った相手以外に請求したり、
差押えをしたりできないかという質問です。

これは、法律上、できません。

法律では、個人と個人、個人と会社の財産は、
別と考えています。
たとえ、親子や夫婦でも、
財産はそれぞれ別なのです。
社長と会社も、会社を動かしているのは社長ですが、
財産は会社と社長は別なのです。

そこで、子供にお金を貸したケース、
夫にお金を貸したケース、
会社に物を売ったケースでは、
それぞれ、子供、夫、会社に対してしか、
請求できませんし、
子供、夫、会社の財産しか差押えをすることができません。

現実には、子供の借金を親が払ったり、
夫の借金を妻が支払ったり、
会社の支払いを社長が
自分の預金から支払ったりすることはあります。

しかし、それは、
法律上の義務で支払っているわけではありません。
子供や夫が「お金を借りても支払わない」と
他人から後ろ指を指されないようにする、
あるいは、親として、妻として、
子供や夫の不始末に道義的責任を感じて、
法律上義務がないのに支払われているだけなのです。

会社については、
社長が個人の預金からでも
会社の支払いをしないと
事業が続けられないから支払っているのです。

だから、親や妻や社長が、
子供や夫、会社がどうなってもよいと考えた場合には、
貸主や売主は、親や妻に請求したり、
社長の財産を差し押さえたりすることはできないのです。

どうしても、親や妻や社長にも請求したい、
あるいはこの人たちの財産を差し押さえたい
という場合には、
お金を貸すとき、物を売るときに、
これらの人に連帯保証をしてもらってください。

このように、お金を貸すとき、物を売るときが、
支払いを確保するのに重要なのです。


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