弁護士・高島秀行さんの
読んだらわかる訴訟の話

第70回
裁判は、証拠と法律の争いです。

裁判で勝つには、
法律で請求が認められること、
証拠から事実が認められることの
2つのことが必要になります。

わかりやすい例で言うと、
法律上、お金を貸したらお金を返してもらえます。
しかし、証拠からお金を貸したという事実が認められなければ、
いくら法律上の理屈で、
お金を貸した人がお金を返してもらえる権利があるとしても、
裁判は勝てないのです。

逆に、事実があったとしても、
法律上、請求権が認められない場合には、
いくら裁判を起こして、
証拠を提出しても、裁判は勝てません。

例えば、AがBにお金を貸しました。
Bは無職で収入もなく、
サラ金からも借金をしていて返済の見込みがありません。
Bのお父さんはお金持ちです。
AとBとの間には、ちゃんと借用証書もあります。

こういう場合、
AはBに対して裁判を起こせば勝つことができます。
しかし、お金持ちであるBのお父さんに対し、
裁判を起こして勝つことはできません。

法律上、お金を返してくれと請求できる相手は
お金を貸した相手だけで、
お金の借主の父親に請求できる根拠がないからです。

子供が払えないなら親が払うという話は、
親の方で子供のトラブルを解決してあげるために
事実上払っているだけで、
子供が借金を返さない場合
親に対し請求権があるわけではないのです。

これが法律の問題です。

お金を貸したけれども
借用証を書いてもらわなかった場合、
お金を貸した証拠としては、

1.お金を相手の口座に振り込んだ

2.一部でも返済を受け、自分の口座に振り込まれた
  あるいは領収書を発行した

3.相手の帳簿に、借入金という記載がある

4.返済を待ってくれという手紙をもらった

5.担保として、権利証などを預った

などが考えられます。
これが、証拠の問題です。

裁判をする場合、
法律と証拠の2つの点から、
自分の裁判が有利なのか、不利なのか、
どこに問題があるのか考えるとよいと思います。


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