弁護士・高島秀行さんの
読んだらわかる訴訟の話

第47回
訴訟に勝つための作戦集4−過激な表現で非難するのは有効か

訴訟は、争いごとで、勝つか負けるか、
けんかのようなものです。
訴訟をやっているうちに、
どんどんエキサイトしてきて、
裁判所に提出する書面に
相手を非難するような表現
あるいは誇張した表現を使うことがあります。

例えば、相手方が事実に反する証言をしたことを、
「虚言を弄し」と表現したり、
相手方が他人の言ったことを信じたことを
「妄信し」と表現したり、
相手方があることについて知らなかったことに対し、
「無知蒙昧」と表現したりすることです。

依頼者からすると、
うちの弁護士さんは、憎たらしい相手に対し
よく言ってくれたと、スカッとするかもしれません。
しかし、それを読んで、判決を下すのは、裁判官です。

誇張表現や相手方を非難する表現をしたとしても、
提出された証拠から判断して、
表現に合致する事実関係が認定できなければ
裁判には勝てません。

証拠が弱いのに誇張表現が強いと、
主張と証拠が乖離してしまいますから、
主張している事実は
認められないということになってしまいます。
また、裁判官から、
この代理人は証拠から
事実を把握する能力が劣っていると思われ、
あまり信用されないということにもなりかねません。

それから、相手方に対する非難の度合いが強いと、
裁判を自分たちの主張を認めてもらうためでなく、
相手方への攻撃のためにやっている
と思われてしまうおそれがあります。
これもまた、
裁判官からの信用を失うことになりかねません。

あまり相手方への非難がひどい場合には、
相手方から侮辱や名誉毀損を理由に
損害賠償請求を受けることもあります。

先日、ジャーナリストの記事で
名誉毀損されたことを理由に
損害賠償を求めていた人たちが
約170万円の損害賠償請求を認められたものの、
反論の中で
「ねつ造記事を書いたのはパパラッチ記者」などと
ジャーナリストを批判したことが
「敵対感情から人身攻撃を主たる目的としている」などとして、
逆に相手方に200万円の損害賠償をしなければならなくなった
という判決も出ています。

どんな表現をするのかは、事案にもよりますし、
主に代理人の性格・能力・考え方にもよりますが、
過激な表現、誇張した表現、
相手を非難するような表現を使っても、
裁判上はあまり有効ではないように考えます。


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