弁護士・高島秀行さんの
読んだらわかる訴訟の話

第38回
相手が嘘をついている

訴訟になる典型的なケースは、
事実があったかなかったか
事実関係に争いがある場合です。
例えば、「お金を借りた。」「借りていない。」
というケースや
「浮気をした。」「浮気をしていない。」
というケースです。

事実関係に争いがあるので、
当事者の話し合いでは解決できず、
訴訟で白黒つけようということになるわけです。
真実は、お金を借りたか、借りていないかの
どちらか1つですから、
どちらかが嘘をついていることとなります。

だから、裁判所から送られてきた訴状を見たら、
自分に身に覚えがないことが書いてあり、
「相手が嘘をついている」と思うかもしれません。

相手が嘘をついていると、
怒る人が多いと思いますし、
怒るのも無理はありません。
しかし、そもそもどちらかが嘘を言っていなければ
裁判にはなりませんし、
相手が嘘をついているのが明らかであれば、
裁判は勝つ見込みが高いということですから、
あまり気にされない方がいいです。

お金を借りていないのであれば、
こちらが署名捺印をした借用証や
領収書などがあるはずがないからです。
こちらが借用証や領収書を書いていないのに、
相手がこれらを証拠として提出すれば、
それは偽造ということになります。

ただ、裁判所は、何も知らず、
相手の言っていることが嘘なのかどうかわかりませんから、
相手の言っていることが嘘の場合は
嘘だとはっきり主張する必要があります。

そこで、訴訟の最初には、
原告の訴状に対し、
被告は答弁書で、相手方の主張に対して、
この部分は事実である、
この部分は嘘であるということを主張します。

・事実である場合―認める
・嘘である場合―否認する
・自分のことでないためわからない場合―知らない(不知)

という言葉を使います。

相手が言っていることが嘘なのに
こちらが認めてしまうと、
自白と言って訴訟上事実である
ということになってしまいます。
だから、相手の主張が事実であるか
事実でないかはよく確認して、
弁護士に伝えてください。


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