第67回
借金について遺産分割協議をする場合は注意してください。

前回、「借金は相手のあることなので、
法定相続分と異なった分け方をしても
相続人の間ではそのような分け方も有効ですが、
借金の相手方(例えば銀行)には
相手方の同意がない限り無効です。」という説明をしました。
うっかりこのことを忘れていると、
ひどいことになる場合があります。

具体例で説明します。
父親Aさんが、6000万円の自宅と
6000万円の借金を残して亡くなりました。
相続人は子供Bさん、Cさん、Dさんの3人です。
Cさん、Dさんは、自宅と借金でプラスマイナス0だから、
長男のBさんが借金を払ってくれるなら、
自宅も全部Bさんに相続させてもよいと考え、
そのような内容の遺産分割をしました。

ところが、その後自宅の価格は下がり、
Bさんがリストラに合い収入もなくなり、
Bさん自身の借金も増えてしまい、
6000万円の借金は払えなくなってしまいました。

この場合、借金6000万円はBさんが全部相続することに
銀行の承諾を得てないとすると、
銀行に対抗することはできなくなりますから、
Cさん、Dさんはそれぞれ、相続分の2000万円の範囲で
借金の返済義務を負うことになってしまうのです。

長男が跡を継ぐから、プラスの財産もマイナスの財産も
長男が相続するという遺産分割をするケースはよく見られます。
ただ、その場合、借金の遺産分割については
銀行の承諾を得ないとあとで大変なことにもなりかねないのです。
よく覚えていてください。

ちなみに、上の例では、Cさん、Dさんは
全くプラスの財産を相続しないケースなので、
相続放棄をしてしまえば、プラスの財産もマイナスの財産も
すべてBさんに相続させることができて、
自分たちがあとで銀行から請求される心配もなくなります。


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2002年11月28日(木)

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