第58回
不良債権処理は借り手も貸し手も損をするけど
やらなければなりません。

銀行が不良債権を処理するには、
不良債権と思われる債権に見合う額を積み立てる方法
(引当金と言います)と、
不良債権を売却してしまう方法、
不良債権の借主から回収できるだけ回収して
破産させてしまう方法があります。
これまで、引当金を積む方法を主に取っていましたが、
それでは景気が悪くなると
さらに引当金を積み増ししなければならなくなります。

どういうことかというと、
引当金を積むのは借り手をランク付けして、
経営内容が悪くなれば引当金を多く積むことになっています。
だから、今年は1ランク健全な不良債権だとして
引当金を積んでも、来年経営が悪化して1ランク悪くなれば、
また引当金を積むことになるわけです。
景気が悪いと毎年これの繰り返しなので
いつまで経っても不良債権処理が終わらないというわけです。

そこで、今、不良債権は売却してしまう、
あるいは借り手に対し返済を強制的に求めて
返済できないのであれば破産させて
返済を受けられなかった額を損として処理するということが
言われているわけです。
そうすれば、景気が悪くなる度に
不良債権が増えるということは無くなるからです。 
でも、借り手を破産させれば、はっきり損が出ますし、
不良債権を売却するとしても、
全額回収の見込みがないわけですから、
買い手は安くしか買いません。
すると、差額が銀行の損となります。

このままの状態にしておけば、損は明確にならないで済むのに、
不良債権処理をすれば明確になってしまうわけです。
それに、このままの状態でも景気が上向けば
全額回収できるようになるかもしれないし、
という期待もないわけではありません。
しかも不良債権処理をすれば、
借り手を倒産に追い込むことにもなります。
だから、銀行は不良債権処理をすると損なのでやらないわけです。

借り手側にとっても、不良債権処理の対象となってしまえば、
倒産に追い込まれてしまい損をします。
それから、銀行が損を出せば、銀行が倒産して、
預金者であるみなさんも損をするかもしれません。
銀行が倒産しなくても、銀行に税金が投入されるので、
国民は損をします。

このように不良債権処理で得する人はいないわけです。
それでもやらなければ、役割を果たした会社が無くなり、
新しい会社が出てくるということができないわけです。
だから不良債権処理は必要なのです。
先送りしても何も解決しないし、
毎年同じ議論をしてるだけでは希望が見えないでしょ。

散々書いてきたのに、何ですが、僕個人としては、
本当は、バブル経済を引きずらない新しい銀行が出てくれば、
既存の銀行の不良債権処理なんて
国がやらなくてもいいと思ってます。

みなさんの中で、新しく銀行業をやる人はいませんか?


■今週の宿題■
裏口入学のために500万円を支払ったけど、
裏口入学できなかった場合
最初に支払った500万円は返してもらえる。
でしょうか? ×でしょうか?
お答えをお待ちしております。


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2002年11月15日(金)

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