第50回
タイムリミット150日の記録 その5
150日前、ベンチマークの店探し

思っていた通りでした。
社長でもあり父親である、厳しく、
やさしく生きて来た尊敬する一人の男の結論でした。
松井さんは「かしこまりました。
120日後の開業を目標に頑張ります」と答えました。
山田専務からは次の様な条件が出されました。

(1) カフェとして営業出来るのは40坪
   残りの10坪は従来通りの不動産業務のスペースとして残す事

(2) 投下資本は最大70,000,000として、全額借り入れ金として計上

(3) カフェは事業部として社員1名を転籍
   松井取締役の報酬は1年目は50%を本社が負担
   2年目からは30%、3年目は0%とする

(4) 事業部は実質家賃として共益費を含んで
   1200,000/月を本社に支払う

この山田専務が出した条件は
かつて大手のカフェフランチャイズチェーンが、
加盟をすすめに来た時、
そのチェーンが出した出店企画書に
記載されていた条件だったのです。
山田専務なかなの知恵者です。

松井さんにとってこの事業は諸刃の刃(もろばのやえば)でした。
自らの報酬は3年后には全て
その事業の内から受けなければなりません。
たとえ創業者の身内と云っても甘えは許されないのです。
しかし松井さんの心はゆるぎません。
退路を断って前に進むしかないのです。
この日から120日、松井さんの行動は「考動」になりました。
まず松井さんが始めたのは「コンセプトづくり」です。
コンセプトとは概念です。枝と葉はいりません。
根と幹の事をコンセプトと云います。
松井さんのコンセプトづくりの第一歩は
ベンチマークとするモデル店探しでした。


『あのベンツもトヨタをベンチマークする。
 強い巨人は、強いライバルをマネる』


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