第94回 社員との関係が、主観的には、ほとんど愛に近いとまえに書いた。 これまで2回、社員をクビにしたことがあった。どちらもパターンは同じ。いずれも30才以上の転職者で、かなり優秀な、バランスのとれた人格に見えた。この人ならば、と思って採用して2ヶ月は蜜月を過ごす。ところが3ヶ月めに、なんか変だなと気づく。優秀だという印象はぜんぜん変わらないのに、成果のきざしがいっこうに現れない。3ヶ月たって何のきざしもないとすれば、メンタリティーの問題かもしれない。このころはもう、いくつかの事実を積み重ねて、信頼を作りはじめなければならない時期だ。 いやいや自分の思い違いか、優秀な人は時間がかかるのかもしれない・・・などと決心がつかず様子を見ると、その後の3ヶ月がつらい。その人のことばかり気になって自分の仕事ができなくなる。5ヶ月たつともうはっきりわかる。やっぱりその人の、仕事についての動機、考え方、習慣、そういうものが違う。 クビにするといっても、むしろ構造的な不適合なので、どちらが言い出すかは、あまりたいした問題ではない。その人の方でも、もう気持ちが落ちている。 失敗事例を結果から見ると、後半3ヶ月間の失恋プロセスは、結論を先のばしして傷口を広げただけである。一人の採用ミスはたちまち数百万円の損になるが、その間、後ろ向きの問題にこちらの頭が占領され、会社の雰囲気も悪くなり、金額に換算できないロスが大きい。 |
←前回記事へ | 2003年4月18日(金) | 次回記事へ→ |
過去記事へ | ホーム |
最新記事へ |