第38回
ブランドケーエイ学13: ブランド戦略とコンペ。
広告の仕事は、コンペになることが多い。
ある課題について、数社に対して企画提案の依頼をして、
いっぺんに提出させ、企画内容を競わせ、採用案を選ぶやり方だ。
広告は、単純な相見積もりでは比較できないから、
ある程度大きな仕事について、コンペは合理的なやり方である。
競争させることで、価格も安くなり、アイディアも選べ、
品質もがんばって上げてくるだろうと期待できる。
業者側からみると、これがなかなか厳しい制度で、
コンペによって業績が悪化している会社も多い。
企画は、提案段階で7〜8割くらい完成するものだが、
もらえるプレゼン料などタカがしれており、
かかった費用をまかなえないのがふつうだ。
2社3社ならまだしも、5社とか7社コンペもまれではない。
わが社は、コンペでの勝率は比較的高い方だと思うが、
それでもコンペ対策に苦慮している面はある。
クライアント側には、いいことづくめのようなコンペだが、
長期的にブランド価値を築こうとする場合は、
よい方だけには機能しない。
つまり、コンペは信頼関係を前提としないものであり、
それは我々にとっても同じことなのだ。
負けることを当然おりこんでおかなければならないのだから、
勝ったときの請求額がそれなりに高く設定されるのは当然だろう。
我々の側からすると、コンペは勝つことが重要であって、
真に消費者むけの企画を提案して、まどろっこしく説得するより、
決定権をもつ人に単純にフォーカスを絞るほうが、話が早い。
また、プレゼン映えのする案がいいという考慮もはたらく。
つまり本音の部分で、オヤジ向けの企画になる。
ブランドを築いていこうと考えれば、長期にわたって、
一貫した企業メッセージを続けることが大切だが、
毎回コンペでアイディアがためされる場合は、
長期的・継続的なメッセージなどひっこんでしまう。
緊張感を維持することも大切であり、
コンペを否定するものではないが、
長期的なブランド構築を考えているのならば、
毎度毎度のコンペは、方法としてはふさわしくない。
「信頼」というキーワードがあるのに、
なぜそれを利用しないのかと考えるわけだ。
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