旅行記者・緒方信一郎さんの
読んでトクする旅の話

第173回
どこへ行っても似たような空港ばかり

一口に空港とはいっても、その規模はいろいろです。
ロンドンのヒースロー空港のように、
巨大なターミナルが4つも建つ空港もあれば、
フィジーの小島にあるような、
空港というよりは「小屋」といった趣の所まで。
ここでは、日本からの直行便が就航している都市にあるような、
国内でいえば、成田、羽田、伊丹、関空、名古屋、福岡、
それくらいの規模を持つ大空港ということで話を進めましょう。

その大空港ですが、最近、
ずいぶん明るい空港が増えたと思いませんか。
たとえば、1998年に開港した、
香港のチェクラプコク国際空港。
広々としたスペースが確保され、
高い天井からは外光が入ってくる。
以前、九龍島にあった啓徳空港は、
古いタイプのエアポートを象徴するような造りでした。
低い天井と曲がりくねった通路、
入国審査のスペースは狭く、
ちょっとでも混雑すると、
実際以上に窮屈に感じたものです。
チェクラプコクと啓徳空港を比べると、
同じ街の空港とは思えないほど、
イメージが変わってしまいました。

違う言い方をすれば、
香港の空港らしくないという印象です。
ただし、これは香港に限ったことではありません。
上海の浦東空港、ソウルの仁川空港、
大阪の関西空港もそうです。
それぞれ虹橋空港、金浦空港、
伊丹空港とは、ずいぶんイメージが違いますし、
街の雰囲気ともかけ離れています。
アジアだけではありません。
パリのシャルル・ド・ゴール空港や
ニューヨークのJFK空港にある、
増設されたり、改装されたりしているターミナルも、
近代的といいますか、外光の入る明るいものです。
外光を利用すれば、照明にかかる電気代を節約できるという
空港運営上の理由も背景にありますが、
イメージの向上や犯罪防止に役立つ利点もあるわけです。
「明るく、清潔で、安全な空港」。
どこもそういうイメージを大切にしているのでしょう。
新しい空港には、その街独特の匂いもほとんどありません。
おかげで、世界中、同じような空港ばかりでつまらない。
そんな声も聞こえてきそうです。
バンコクの空港などは、
街中の雰囲気が色濃く出ていますが、
ここにも近いうちに新しい空港が造られる計画です。
個性的な空港はどんどん減っていく、
それが大空港の世界的な流れです。


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