旅行記者・緒方信一郎さんの
読んでトクする旅の話

第1回
最初の旅の「トク」した話

最初ですから、はじめての海外旅行の話をしましょう。
どこかで聞いたのですが、最初の海外旅行には、
その人の性格が如実に出るそうです。

私がはじめて海外旅行をしたのは、1988年、22歳の時でした。
行き先はヨーロッパ。
当時はパッケージツアーで行く人が圧倒的に多かったのですが、
私は迷わず格安航空券だけを買い、
いわゆる自由旅行を選びましたね。
理由は、パッケージツアーは旅行会社が儲かって
旅行者は損をする仕組みになっているに違いない、
と思ったからです。
一緒に行った友達は、
「自分でホテルとか取るのは面倒くさいよ。パックの方が楽だよ」
なんてブツブツ言っていましたが。
成田からパリに入り、
帰りはチューリッヒから帰国する
大韓航空の格安航空券で行きましたが、14万円でした。
JALは確か30万円を超えていたと思いますから、相当安かった。
もっと安いマレーシア航空か
パキスタン航空の航空券もあったのですが、
それは時間がかかり過ぎました。
大韓航空の方が、コスト・パフォーマンスがいいと
考えたわけです。

あれから16年経った今、
こうしてトクするネタをコラムに書いていることを思うと、
当時から自分はそういう性格だったのだと改めて思います。

でも一方で、旅をすると、
お金に代えられない経験ができることも知りましたね。
いや、旅にかけた金額以上の貴重な経験ができることを知った、
と言った方が正しいかもしれません。

まず、パリに着き、次にバルセロナに移動したのですが、
そこで友達がパスポートを盗まれてしまいました。
そのため、予定より長く
バルセロナに滞在することになってしまった。
アントニオ・ガウディやジョアン・ミロの作品などを見て、
一通り滞在の目的を果たすと、
もうすることがなくなってしまったと思ったのですが、
実はそこからが面白かった。
ホテルの近くにバール(大衆レストラン)があり、
そこの店員と顔見知りになったり、
メインストリートのランブラス通りに
思いがけずフラメンコのバーを見つけたり。
そういう何でもない体験が特別に思えて、
嬉しくなってきたんですね。
その後も、いろんな街へ行きましたが、
どこへ行っても目的もなく歩き回るのが好きになったのは、
この時の思い出があるからなのでしょう。
ちょっと格好よくいえば、自分の旅のスタイルを見つけたのです。
それができただけでも、最初の海外旅行は
かけたお金の元をとった、と考えているわけです。


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