中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4324回
香港の返還に立ちあって思わぬ好運に

私が昭和29年に亡命先の香港から
その昔、大学に通っていた東京に舞い戻って
作家として身を立てるべく作品を書きはじめた時は、
日本が財政のピンチから立ち直って、
高度成長期にさしかかる時でした。
私は日本人が1人も出て来ない
台湾や香港を舞台にした小説を書いて
心の寛い審査員先生方のおかげで
直木賞を受賞することができましたが、
ちょうど経済の大発展する時期だったので、
東大の経済学部で勉強したことと、
香港に亡命してお金に苦労したことが役に立って、
私は株式投資からスタートして「お金儲けの神様」
という異名までいただいて、
日本のジャーナリズムの一角に生き残ることができました。

しかし、生命カラガラ台湾から亡命して24年目に、
台湾の国民政府が国連から脱退し、
政情不安におち入ったので、
今度は向うから逆に使いが3度も東京に住む私のところに見え、
私が台湾に戻って人心安定の
トランキライザの役割をはたすように懇望されました。
ちょうどその時期は
台湾と韓国の高度成長がはじまる時期だったので、
私はアジアの経済成長期には
いつも陽の昇る位置にいたということになります。

それから20年ほどたって、
今度は香港がイギリスから
中国に返還される時期がやってきました。
歴史的な大事件で、
「資本主義下に発展した自由港香港は
共産主義中国の傘下に入ったら、ゴースト・タウンになる」
と日本国中の輿論が決めつけていました。
でも私は香港のことは知りつくしているし、
「文明は低い方から高い方に動くのが人類の歴史である」
と信じていた私は「大陸の香港化」がはじまるのであって、
香港がゴースト・タウンになって
人類の歴史から消えてなくなるのではない」
と主張して、私の信者たちを引き連れて
値下がりした香港のマンションを買いに出かけました。
10回以上も足を運んで全部で650室手に入れたことがあります。
そうしたらそれが天安門事件後に
いきなり6倍に値上がりしたのです。


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2012年1月11日(水)

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