第4283回
日本の乾杯と中国の乾杯は違います
中国人が一番信用しているのは自分の家族で、
一番頼りにしているのはお金です。
そして、一番大切にしていることは食べることです。
この3つさえ揃えば、
どんなきびしい世の中でも生きて行けるし、
また長い歴史を生きてきたのです。
もちろん、身内のほかにはそれに準ずる友人がいるし、
またお金と言っても、いま毎日使っている紙幣のことではなくて、
不動産が先ず頭にあって、
その次は戦争の時に持って逃げられる貴金属、
なかでも黄金の延棒ということになるでしょう。
ですから親しくなったら、先ず家族のことを尋ねます。
親しくなるための共通の話題はお金で、
はじめて会った人でもお金の話をすれば、話題には事欠かないし、
たちまち打ち解けて親しくなります。
そうなるためのチャンスは食事の席ですから、
人づきあいは先ず一緒に食事をすることからはじまります。
食事の席で一番大切なことは乾杯です。
日本人が「乾杯!」と言う時は杯を高くあげたり、
カチンと杯を合わせて一口飲むことですが、
中国人の場合はコップに注がれた酒を全部飲みほすことです。
一卓12人で食事をする時は先ず全員で1回飲み干し、
それから一人ずつ乾杯をやると11回、
更に向うが一人ずつ返礼の乾杯をやりますから、
少くとも23杯飲まなければなりません。
ビールや老酒ならともかく、40度も50度もある白酒でやれば、
意識朦朧となって人に抱えられてホテルに戻り、
いつベッドに入ったかわからなくなってしまいます。
そうならないためには「私は下戸なので」と
予め断わる必要があるし、
「乾杯」と言わずに「半杯」とか、
「少し」とか、予め断わらないとひどい目にあってしまいます。
中国人とのつきあいは
先ず意識不明になるところからはじまりますが、
そのへんの要領を心得ている人とそうでない人とでは
中国で仕事をやる場合、大きなひらきができてしまいます。
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