中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4263回
お金の洪水がもたらした世界大不況

今の世界的な経済不安は産業界の不況から起っていると言うよりは、
ペーパー・マネーの濫発から惹き起された
金融業界の大洪水だと私は見ています。
政治にたずさわる人は、
自分のふところが痛むお金でないこともあって、
公のお金を使う時は気前がよいし、
人気取りが必要な時は大盤振舞いをします。
基本的に人気商売ですから、
国の予算を組む場合でも年々ふえることはあっても
緊縮財政に戻ることは先ずありません。
従って「入るを図って出ずるを制する」よりは、
不足する分はどうやって次の政治家に荷なわせるかで
その場しのぎをします。

また国際収支にしても、
構造的に黒字の国やまだそのプロセスにある国は別ですが、
いわゆる先進国のように国民が贅沢に慣れて
稼ぐより使う人が多くなると、
財政だけでなく、貿易収支も赤字に転落します。
その不足分を節約や自国通貨の値下がりによって調達するよりは、
アメリカのようにドルの増刷によって賄いますから、
気がついた時はお札の洪水になってはねかえってくるのです。

では国力の弱い国は忍耐して貧乏に甘んずるかというと、
いまユーロの中で
ピンチにおちいっている国々を見てもわかるように、
アメリカに負けないくらいそれぞれの国が借金をして
負債をふやしますから、国債の償還期限が来ると
借金の返済ができなくなってしまうのです。

国の借金は民間から資金を預った銀行が貸しつけていますから、
お金を返してもらえなくなれば、
銀行がお金が返せなくなってバタバタ倒産します。
すると、大騒ぎになりますから、
何とかして返済する資金を捻出しなければなりません。
産業界に大混乱をひき起しているのは、
物が売れないことから起るピンチではなくて、
政府がお金を使いすぎて
返せなくなったことから起っているピンチです。
そのお金の仲介をしているのが銀行ですから、
短い間に銀行が如何に堕落したかを物語るものです。
リーマン・ショックからはじまって
次々と起っている経済界のピンチはいずれも
銀行がもたらしたものと言っても言いすぎではありません。


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2011年11月11日(金)

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