中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4257回
いよいよ増税のシーズンに

いよいよ増税のシーズンが押し迫ってきました。
増税はもうこれ以上待てない、
やむを得ないから議題にのぼるのであって、
選挙票の上に成り立っている議員さんたちで
心から賛成の人は先ずいないと思います。

ですから増税の必要が起っても、
なるべく先へ先へと、どの内閣も引き延ばしにかかります。
切羽詰まった頃には自分はもうクビになっている筈だから、
次の人に尻ぬぐいをしてもらえばいいじゃないかと
総理大臣をやる人は誰でも考えます。

消費税3%を実施する時、私は反対を唱えて、
新聞・雑誌からテレビまであらゆるマスコミを利用して
反対意見を述べました。
年寄りに年金や生活保護費を払っておいて、
その年寄りからまた消費税を取るのは矛盾しているし、
私のように香港に居を移した人は
消費税のない香港で買物をすれば直接の被害はないのですが、
もし日本がたとえ3%でも消費税をとれば、
そのうちにだんだん財政困難におちいって、
消費税を3%から5%、5%から10%と少しずつふやして
そのうちに20%を超える時が必らず来る。
税金はとりやすいようにするよりも、
とりにくいようにすることが国の無駄使いを防ぐ方法です――
というのが私の考え方だったのです。

でも消費税法が議会を通過して、税制として定着したので、
日本人の運命は決まってしまいました。
財政困難におち入った上に、老人がふえれば、
そのうちに年金が払えなくなります。
だから私は厚生年金に加入するのはやめて、
自分の老後の心配は自分でやる道を選びました。
おかげで生きる気構えが違い、
90歳近い今も収入の道はとざされておりません。

しかし、政治のシステムは私の予想した方向を走っているので、
いよいよ国の台所が金詰まりに直面してきました。
消費税の値上げは先ず避けられないでしょうが、
うっかりすると敗戦後の財産税が息を吹きかえすのではないかと、
お金のある人は皆、心配するようになっています。


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2011年11月5日(土)

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