中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4179回
ドルの濫発にもそろそろ終わりが

産業が発展して国が豊かになったら、
どこの国でも賃上げの要求が高まります。
アメリカの場合は物づくりに従事している企業が
コスト・ダウンの努力をする代わりに、
生産を低開発国に任せて、
自分たちはドルを刷って支払いをする道を選びました。
物づくりに励むより輸入をして
流通過程で儲ける方がラクですから、
ビジネスに従事する人たちはラクな道を選んだのです。

そのおかげで日本やイスラエルのような国は
厖大な外貨を稼ぐことができたし、
そのあとに続いて、台湾や韓国も豊かな国の仲間入りをしたし、
この10年で言えば、中国も「世界の工場」として
3兆ドルも外貨準備を保有する国になったのです。

それに対してアメリカは
輪転機をフルに動かしてドルを印刷しまくったので、
ドルが世界中に溢れるようになってしまいました。
かつて世界中の消費者の顔を真っ青にさせた石油は
その後も100ドルを超えて150ドルに達する勢いでしたが、
アメリカにして見れば、
たったの12ドルで石油を買って使うことができたのですから、
印刷した分だけトクをしたことになります。

しかし、無限にそれを続けて行くことはできません。
世界中にあふれたドルはふえればふえるほど価値がなくなるし、
それを集めて利殖をしようとすれば、
金で金を稼ぐビジネスに走るよりほかなくなります。
リーマン・ショックに端を発した世界的な金融不安も、
もとを言えば不動産の差額を稼ぐために
支払い能力のない貧乏人たちにあれこれ優遇条件をつけて
融資をしたことが原因になっています。

そうしたアメリカに倣ってお札を刷って
その場のピンチを切り抜けることができるようになると、
世界中の国々が紙幣を乱発して急場をしのぐようになります。
そのつけが体力のない国から次々と発病する時点に
いま私たちはおかれているのではないでしょうか。
世界的な株価の暴落はそうした経済力の大移動のはじまりと見て
いいのではないでしょうか。


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2011年8月19日(金)

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