第3989回
過剰流動性の解決にならない外貨の使い方
4、5年ぶりに国賓としてアメリカを訪問した胡錦濤は
オバマ大統領との会談を無事に終えて帰国したと報道されています。
航空機を何百億円分も買ったとか、大豆を大量に仕入れたとか、
中国の国営銀行がアメリカの銀行に出資したとか、
中国の輸入を大量にふやすことによって、
アメリカの不満を緩和した、少くともギクシャクした関係を
かなり改善したと受け取られていますが、
そのために使われる外貨は
人民銀行が保有している外貨の中から支払われるのでしょうか。
それとも民間に流れている人民元を一旦回収して、
その中から支払われるのでしょうか。
そのへんのところが、中国の場合、曖昧なままになっています。
日本の場合は、日銀に貯まった外貨は民間のものですから、
民間の企業や民間の銀行や保険会社が
自分たちの持っている資金を外貨に換えて、
アメリカの不動産や銀行に投資したので、
その分だけ過剰流動性の縮小になっていますが、
それでも海外投資はうまく行かなかったし、
その上、バブルがはじけて産業界全体が大きな被害を蒙りました。
中国の場合は、国家権力が強い上に、
海外投資に資金を動員する大企業の大半が国有企業であるために、
そのへんのところが曖昧になっています。
国有企業が海外資産を確保したり、海外企業に出資する場合、
それが国内人民元の回収を伴わずに、
一方的に外貨にだけ手をつけることになると、
過剰流動性の解決にならないどころか、
人民元の垂れ流しのまま外貨減らしをすることになりますから、
バブルを解決するどころか、
それを一段と押し進める可能性を孕んでいます。
私はもしかしたら中国政府が
人民元の切り上げに踏み切るのではないかと期待しましたが、
莫大な外貨をアメリカ製品の購入に使うことによって
一時しのぎをすることになると、
問題は一そう深刻な方向に進むのではないでしょうか。
大豆の買い方を見ても中国が食糧不足の方向に動いていることが
誰の眼にもはっきり見えてきましたが。
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