| 第3675回安売りの整理統合にあと3年はかかる
 いま日本で起っている不景気は景気不景気という
 ビジネス・サイクルがもたらした不景気ではありません。
 アメリカがドルを刷りすぎてふえすぎた遊資と
 それに刺戟されてふえすぎた工業生産の豊作貧乏がもたらした
 需要と供給のアンバランスですから、
 アメリカのピンチが解消に向うか、
 工業製品の過剰生産に歯止めがかからない限り、
 正常なビジネス・サイクルに戻らないだろうと私は見ています。
 ところが、どんな原因からはじまったことであろうとも、不景気になると、物が売れなくなります。
 物が売れないと、滞貨の山になりますし、
 業績が悪化して企業は赤字になってしまいますから、
 消費者に直接、物を売る百貨店やスーパーやコンビニは
 大あわてにあわてて安売りに転じます。
 安売りをして何とかピンチを逃がれようとするのです。
 確かに安売りをすれば、お客がわあっと集まります。しかし、同業者が指を食わえて見ているわけがありませんから、
 安売りが安売りを呼び、売上げが減るだけでなく、
 利益も減ります。
 かつてダイエーの中内功さんが元気だった頃、
 「価格破壊をして見せてやる」と豪語して
 輸入ビールを100円割れで売り出したことがありましたが、
 私は「価格が破壊されるより会社が潰れるよ」
 と警告したことがあります。
 安売りは長く続かないばかりでなく、
 悪くすると企業をピンチに追い込むことさえ起るのです。
 安売りがデフレを加速し、デフレが更に安売りを促して、悪循環をくりかえすのです。
 ですから安売りをしなくとも、売れる商品を工夫し、
 売れる商売のやり方を工夫する以外に妙法はありません。
 もちろん、そういう工夫のできない業者の方が
 多いにきまっていますから、
 ここは倒産したり、吸収合併される企業が多く、
 選手交替の時期だと言ってよいでしょう。
 歴史のある大きな企業だから大丈夫だということはありません。
 あと少くとも3年くらいは
 整理統合がくりかえされるのではないでしょうか。
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