中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3657回
私のバカの一つ覚えは成長株買いです

はじめて株に興味を持った頃、
と言ってももう50年も昔のことですが、
私はヒマを見つけては、わざわざ証券会社まで出かけて行って、
黒板に書き出された株の値段を見たり、
株をやっている人たちの意見をきいたりしたことがあります。
いまなら自分のオフィスか家にいて
パソコンを叩けば間に合ってしまうことですが、
刻々と変わる相場の動きを見ながら、
自分の作戦を練ることに
一種のスリルと喜びを味わうことができました。

証券会社の椅子に坐って黒板と睨めっこをしていた人たちは
いずれも私にとっては先輩だったので、
はじめはその人たちの意見にいちいち耳を傾けたりしたのですが、
そのうちに
「あの人が買ったら、もうその株は買っていけない」、
また
「あの人が売ったら、その株は上がりはじめるぞ」、
といった全く相場と逆行する行動をとる人や
私より無知な証券会社のセールスマンの意見をきいて
株を買ったり売ったりする人たちだということに気づいて
びっくりしたことがあります。

私が上場会社の社長さんたちを訪問したり、
4大証券の株式部長さんたちと対談をしたりするようになると、
いつの間にか、私が買う株に提灯をつける人が一杯あるようになり、
証券会社の支店長が私の買い終わるのを見て
「もうよろしいですか」と私にきいてから、
他のお客にすすめて株を買うので、
その支店は忽ち優良店にのしあがったそうです。

私は株は相場を張るものではなくて、
仕事量がふえて大きくなる会社の株を買うことだと思って、
次々とそういう会社を探がし出して週刊誌に書いたので、
私が取り上げると
忽ち毎週のようにストップ高が起るようになりました。
株は競馬と違って買う人がふえるほど株価が上がって
買った人の取り分がふえますから、大へんな評判を呼びます。
当時、私はまだ35、6才でしたが、
「株の神様」とか、
「神様、佛様、邱永漢様」と雑誌に書かれたりすると、
有頂天になるよりは
冷やかしの対象にされているとしか思えませんでした。
でも私の財産は1年で25倍にふくれあがりました。


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2010年3月15日(月)

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