中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3651回
お金は掘る物でつくるものではない国

日本が資本も資源もなかったのに、
無一文に近い状態からスタートして
アメリカに次ぐ金持ちの国にのしあがったのは、
安い原料をよその国から仕入れてきて加工して
付加価値をつけて売ることに成功したからです。
日本人は鉄鉱石やアルミや銅の原石を仕入れてきて、
それを加工して人の欲しがる自動車を一台つくれば、
それを売ったお金で、その何十倍もの
石油や米や羊毛を仕入れることができることを知っています。

ですから日本人はお金が欲しかったら、
人の欲しがる物を工夫してつくればいいと思っています。
ところが、ブラジルに行くと、
いまでも大半の人がお金は掘ってつくるものだと信じ込んでいます。
現に資源は山を掘ってそれをお金に換えますが、
農作物も土とお天道さまを頼よりにして育てます。

もともとアメリカの大発見も金鉱を探して
ヨーロッパから西へ西へと向って行った末に発見したものです。
早くから南米に移住したポルトガルやスペインの人たちは
お金は地面を掘ってつくるものだと
信じて疑わない人たちの子孫です。

もちろん、ヨーロッパからの大移民といまは現住民が入れまじって
どこの誰だか本人にきいて見ないとわからない状態ですが、
「お金は土を掘ってつくる物」
と信じて生きてきた人たちに「頭を使ってお金を生め」
といっても無理の一語に尽きます。
ですからアマゾンの中心にあるマナウスに行った時も
工業団地の見学をしに行きましたが、
ほとんどの工場は海外からの進出企業で、
そこで働く人の創意工夫とか、
進取の気性とかはその影を見ることさえできませんでした。
何しろ、キャデラックやベンツやレクサスは
遂に1台も見かけませんでしたから、
資源大国であることと先進工業国は
全く別の存在であることを認めざるを得ません。

今後、資源がいよいよ注目の対象になることに
間違いありませんから、
ブラジルにも大きな変化はあるでしょうが、
資源の果実はごく一部の人たちが収獲するもので
残念ながら、国民生活のレベルを
引きあげるエネルギーにならないだろう
というのが私の印象でした。


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2010年3月9日(火)

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