中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3633回
世襲制と資本主義は相容れない

日本の国もずっと身分制の社会でしたから、
親の跡を子が継ぐのが常識でした。
士農工商と言われるように、サムライの身分が一番高く、
アキンドがお金を扱うので、一番さげすまれた存在でした。
でもお金を扱うアキンドの方が
一番お金に恵まれるチャンスがあり、
お金に困った大名が頭を低くして面倒を見てもらう場面も
少なくはありませんでしたから、
封建制度の時代でも表向きと実際に起ることは
また別だったと考えていいと思います。

世襲制公務員としてのサムライは
親のあとを子供が継げば何とか間に合いましたが、
お金を扱う商家ではそうはいきません。
ですから大阪商人が婿をとって
婿養子に跡を継がせたのを見てもわかるように、
バカ息子では家業がもたなかったのです。

明治以降、新しい財閥が生まれ、
産業界に新勢力が生じても、一代や二代、
商家に世襲制が受け継がれたでしょうが、
終戦後、日本が世界第二位の経済大国に
のしあがって行く過程では
もはや世襲制では産業界はもたなくなってしまいました。
気がついてみたら、
明治以降に新しく誕生した財閥も次々と解体され、
名前はそのあとを継いでも
実体は全く新しい企業が次々と誕生して、
日本には新しい経済体制ができあがってきたのです。

資本は昔は子が親の跡をついだのですが、
企業のやることは現金や不動産を相続するのと違って
「生き物」の面倒を見るようなものですから、
ちょっと間違ってもたちまち飼い犬にかまれてしまいます。
会社という「生き物」を更に大きく育てるためには
会社をつくった傍にいて面倒を見て来た人か、
それを業として一家をなしたベテランでないとつとまりません。

ですから会社のスケールが
個人の能力では消化しきれない大きさになると、
世襲制ではもたなくなって、
経営を担当した人が「この人だ」と
指定するシステムに変わってしまったのです。
結果としてサラリーマン上がりの経営者が経営する
資本主義になってしまったのです。


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2010年2月19日(金)

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