中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3616回
新しい四川料理はまだ誕生していません

成都や西安はそれぞれの歴史もあり、
行ったことのない人はたくさんいるでしょうが、
昔から知られた観光都市です。
はじめて中国旅行を志した時、
私は北京と上海のほかに西安を選びました。
唐詩選とか、西遊記を読んだことのある人なら、
またかつての楊貴妃や杜甫の故事を知っている人なら
一度は西安に足を踏み入れたい気持ちを起しても
不思議ではありません。

また最近は日本の若い人たちの間に
三国志のブームが根を下ろしているそうですが、
京劇に関心を示すような人なら、
劉備が三顧の礼で諸葛亮孔明を軍師に迎え入れた話や
劉備が関羽や張飛と桃園の結義に臨んだ故事来歴に
無関心というわけには行かないでしょう。
ですから諸葛亮孔明を祭る武候祠に
行って見ませんかと誘われれば、
いやと首を横ふるわけにも行かず、
とうとう四川省の経済顧問を引き受けたり、
成都市にショッピング・センターを建てたりする
めぐりあわせになってしまったのです。

そのおかげで私は中国大陸の奥地にあたる成都や昆明にまで
縁があるようになってしまいましたが、
よくよく見るとそういう所まで大陸の香港化がすすみ、
都市の高層化がすすんでいるのです。
かつての名所旧跡は高層ビルの谷間に沈んでいますが、
歴史の古さを強調するために、
由緒ある通りはその歴史を強調するための改造が大々的に行われ、
高額の入場料の取り立てにも地元の政府は熱心です。

ところが何が遅れているかというと、
時代の変化に見合う料理の現代化です。
10何年前私が四川省長や成都市長に招待された
由緒ある四川料理屋でいまも残っている店は一軒もありません。
何千年の歴史があっても、時代が変わると、
その土地の料理がその土地の人たちの口に合わなくなるのです。
ですから、新しい料理が要求されるのですが、
それを供給できるレストランがこれまた
数えるほども新しく誕生していないのです。
中国全体が新しい中国に生まれ変わろうとしているのに
土地を代表する新しい料理が形になっていないのです。
これチャンスと思いませんか。


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2010年2月2日(火)

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