中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3578回
庶民の海外投資が盛んになります

「円高になると、日本人の財産や
収入がそれだけ高く評価されるのだからいいじゃないか」
という経済の専門家たちがいますが、
そういう専門家たちは
大半が商売の実務にかかわっていない人たちです。
自分たちが実害を蒙らない立場にいるので、
日本の国がどんな目にあわされるのかわかっていないのです。

現に自動車とか、家電製品とか、
あるいは鉄、石油製品などの資財を大量に輸出している
日本の代表的メーカーはドルが1円下げるだけで
何億円、何十億円の減収になります。
その分だけ利権が減少しますから、
税収に大きく響きますし、収益が一致して赤字になりますと、
従業員の解雇から賃金のカットまで引き起します。
高度成長下の円高と違って、
成熟経済になってからの円高は
企業の倒産と税収の激減をもたらすものなのです。

そうした赤字化のさなかで、
景気を刺激するために政府が大盤振舞いをすると
政府の借金がふえる一方ですから
税金を払う立場におかれている人たちは
「今に必らず増税になる。
増税にならなくとも大インフレになることは避けられない」
と恐怖心をかき立てられますから、
前にも述べたように、
自分の持っているお金を先ず日本においておかないように、
一先ず海外に逃がす方法を考えるようになります。

たまたまそういう心理状態になっている時に、
日本株より中国株の方が投資の対象として
魅力的だということがわかれば、
日本のごく普通の家庭でも銀行に預けているお金や
一向にパッとしない日本株を処分して、
中国株に乗り換えようと考える人がふえたとしても
決して不思議ではありません。
もちろん、投資対象は中国株だけに限ったことではありません。
ベトナム株もあれば、
ブラジル、ロシア、インドと言ったブリックスの株もあります。
一度、扉がひらかれれば、
人間と違ってお金は
ドッと日本から逃げ出す方向に向って走り出します。
円高が日本のお金に早く逃げろと鞭打っているようなものです。
来年からの新しい動きの1つだと私は見ています。


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2009年12月26日(土)

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