中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3552回
偶然からはじまった雲南のコーヒー事業です

日本では想像できないことですが、
中国に行くと巨大な漢方の市場があります。
漢方は中国では病気の処方のことですから
病人は漢方のお医者さんから処方をもらって、
薬局に薬を買いに行きます。
その薬の卸し市場が成都や昆明に行くと
びっくりするほど大きなスケールで、
それぞれの専門店が軒を並べています。

日本の漢方の店に比べると
言い値で買っても信じられないような安値ですから、
一緒に行った社長さんたちは値切りもしないで
夢中になって欲しい物を買っていましたが、
ふと気がついて
「センセ、値切るのを忘れていました。
これいくらかきいて見てくれませんか」
と私にきいたので
「僕がきいても駄目ですよ。
一緒にきたうちの社員に地元の言葉できかせて見ましょう」
と言って何気なくきかせたら、
何とさっきまで吹っかけていた値段の
10分の1の値段がかえってきたのには
私がもう一度びっくりしました。
「ですから中国に来てピンハネされまいとして
自分で取引をしても駄目ですよ。
信用のできる代理店を通して仕入れた方が
ずっと安上がりのこともあるんですから」
と私に冷やかされる一幕もありました。

しかし、この時に期待していた
ハーブ茶の開発は結局不発に終わり、
その時、同行した中国野菜の輸出をしていた日本人が
足を伸ばして昆明まで行ったのが
私にコーヒー事業を手がけるきっかけをもたらしたのです。
ご本人は雲南省の松茸を仕入れる仕事のために
のこのこ出かけて行ったのですが、
肝腎の松茸運びは陽の目を見ず、帰りに飛行場の売店で買って
東京の私の事務所にお土産として持って来た小粒の雲南コーヒーが
私の目にとまったのです。

何が人の運命を左右するのか、
本当に実際にそれが起るまでわかりません。
「必要は発明の母」と言いますが、
「偶然は成功の父」と私は思っています。
コーヒーの栽培をやるビジネスは成功どころか、
まだ軌道にすら乗っていませんが、
こんなきっかけでもなければ
私が首を突っ込むことにはならなかったことです。


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2009年11月30日(月)

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