中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3481回
それでも産業界は生き残れるか

「猿は樹から落ちても猿だが、
議員は選挙に落ちたら議員でなくなる」というのは
かつての大野伴睦さんの名ゼリフですが、
昨日まで大きな顔をしていた有名政治家でも一夜明けると、
普通の人よりもっと惨めな立場におちてしまいます。

ですから、衆議院で過半数を占めて、
当分、何の心配もなくなってしまった民主党の人たちでも、
組閣も何もはじまっていないのに、
早くも来年の参議院の選挙のことを心配しています。
議員になったら政策のことで
どんなことを心配したらいいのかということよりも、
この次の選挙で落ちないためにはどうしなければならないのか
という心配の方が大きいのです。

たとえば、ここのところ、アメリカの景気は少し戻りましたが、
消費の伸びは悪いし、失業も改善されておりません。
すると少々ばかり戻った株価がまた下げに転じます。
株価が下がると、為替もドル安に転じます。
100円に近づいていたドルが
またもや90円を覗くところまで円高になります。
たとえ1円でも円高になったら、
日本の輸出産業は受け取るお金が莫大に減りますので、
日本国内の輸出産業はその度に顔が蒼ざめます。
日本の産業界の損を少しでも食いとめる努力をしなければ、
国内の景気もよくならないし、
税収の減収も食いとめることができないのです。

ところが、日本国中の議員さんたちは選挙のことばかり気にして、
産業界が損をすることを気にとめる人は一人もおりません。
自分たちのことと思っていないのです。
円高になっても、自分たちのふところに全く関係がないからです。
日本銀行の高級幹部にも、
財務省のお役人さんにも同じことが言えます。
ならば経済界が大きな声をあげればいいじゃないかと言っても、
いまの経団連のトップたちは
政界に対して中立を決め込んでいますから、
口を出すことすらできません。
予防には手を出さず、
病気になってから愚図愚図こぼすだけなのです。
はっきり言えば日本には経済政策なんて何もないのです。


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2009年9月20日(日)

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