第3330回
為替操作をしない本当の理由
輸入が増え続けて貿易収支の大赤字に悩んでいるアメリカが、
人民元の切り上げ要求をしてもなかなか応じない中国を
いくらなじっても中国がガンとして応じようとしない
姿勢が続いていることは皆さんごらんになっている通りです。
では輸入の赤字分をドルを印刷して支払い、
辛うじてドル相場を維持しているアメリカが
ドルの為替相場を成行きに任せているかというと、
フローティングどころか、
どこの国よりも眞剣になって
為替のレートの維持にきゅうきゅうとしています。
ドルを外貨準備として一番たくさん保有しているのは
ほかならない中国であり、
中国の次は日本です。
これだけアメリカの貿易赤字が続けば、
本来ならドルは日を追って下落すべきものですが、
ドルが下がると、
中国も日本も大へんな損害を蒙りますから、
どうしてもドルの相場を維持することに協力することになります。
しぜんに任せると言っても一番先頭に立って
自国通貨の維持に腐心しているのはほかならぬアメリカであり、
それと同じように世界中の国々が、
それぞれの立場で自国通貨の為替レイトの維持に
きゅうきゅうとしていると言っていいでしょう。
フローティングが建前だと言っても、
目立たないように操作をするダーティ・フローティングでないと
やって行けないのが現実の姿なのです。
もう1つ、為替相場は輸出と輸入のバランスによって決まればいい
と言いますが、
為替が動けば外貨の投機に従事する人々は
売りと買いの差額を稼ぐことができます。
ですから株をやるように為替の売買をするプロはふえる一方で、
実際に貿易の決済をするよりも10倍どころか、
100倍ものお金が動くと言われています。
そうしたお金の動きをコントロールするだけの実力を
どこの国の中央銀行の総裁も
持ち合わせていないと言われていますが、
為替相場を動かしているのが貿易の決済金額だけでなく
投機資金も含めたものだとすれば、
政府は自国の産業界を守るためにも、
もっと生命賭けで
為替の操作に力を入れるべき立場におかれています。
日本の場合は正直すぎるというよりは、
為替の実情に対する認識ができていないという見方が
できないでもありませんが。
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