| 第3303回中国の農業は改良、改善の時期に
  いま中国で最も切実な問題の1つは如何にして農民の所得をふやすかということです。
 工業化がすすむにつれて
 沿海地域での労働力に対する需要が大量にふえたので、
 農村地帯からの人口の大移動が起りました。
 それが国全体の所得増大に寄与したし、
 国元への送金が多少なりとも農村を豊かにしました。
 でも都市と農村の所得の格差は拡がるばかりで、
 やがて日本のように農村が衰微するのではないか
 という心配は大きくなる一方でした。
 当然のことながら、
 農村の活性化はここのところ、
 ずっと政府の最大関心事の1つになっています。
 そこへ世界的な金融不安の津波がドッと押し寄せてきたので、沿海地域では輸出の不振による倒産や
 操短による過剰人員の整理がふえ、
 労働力の農村への逆流も大きな流れになっています。
 だからと言って田植えをする人がふえるわけではありませんから、
 政府は失業を少しでも抑止するために
 成長経済を維持する必要に迫られています。
 中国政府が全力をあげて
 8%の成長力の維持に努めているのはそのためです。
 しかし、その一方で農村の活性化に力を入れているのは所得の向上するにつれて
 食糧に対する需要は増大且つ高級化するのに、
 農村がそれに対応できなければ大へんなことになるからです。
 そればかりでなく、
 農民の所得増大をはからなければ、
 国全体のバランスが崩れてしまうことは目に見えています。
 私自身もそういう目で見るようになって、
 色々と農業の大企業化の構想を打ち出し、
 各地の政府の当事者たちと接触するようになると、
 全国どこの地方政府でも
 農業の開発に異常なほどの関心が強いことがわかり、
 内心、一驚しています。
 たとえば私が地方の大規模農場や牧場の見学に行くと、どこの省や市でも副省長とか副市長がすぐに出てきて
 向うからすすんで対応してくれます。
 省長や市長は地域の顔ですが、
 実際の仕事は副省長、副市長が担当しています。
 いま担当者が一番関心を持っているのは
 どうやったら農業生産の改良、改善ができるかということなのです。
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