中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3277回
長生きしたかったら銀行とつきあうな

10年前のアジア金融不安の時、
私はお金を借りて事業をやることに
とても不安を感ずるようになりました。
とりわけ不動産を買ったり、
事業として不動産を開発する場合、
大半の人が銀行からの借り入れを計画の中に取り入れますが、
それによって成功する確率よりも
蹴躓づく可能性の方が大きいと感ずるようになりました。

バブルがはじけて地価がそれこそ
高値から10分の1まで下げた時、
銀行から借金してプロジェクトをすすめていた
大半の人たちは借金を返せなくなり、
訴訟沙汰になったり、
競売に付せられたりして財産を失いました。
私はそういうこともあり得ると考えて
国内では無理な借金は一切しなかったので、
辛じて土俵に片足残りましたが、
海外に進出するヤオハンと組んだばかりに、
83億円も損を抱え込んでしまいました。
百貨店のために建てた不動産が値下がりして
借金の返済に10年以上も苦しまされたのです。

ですからかつて「銀行とつきあう法」を書いて、
借金をして不動産を買うことを人にもすすめ、
自分もいくらか財をなした私が、
借金の金利と返済に追われて
「銀行とつきあわない法」を書く破目に
おちいってしまいました。
9年前に書かれた幻冬舎版の私の
「銀行とつきあわない法」を読むと、
皆さんは先見の明のある人だなあと
感心して下さるかも知れませんが、
本当は人より早く且つ莫大な授業料を
先払いして身についた知恵なのです。

借金というのは一番困ったときに「返せ返せ」と
無理やり剥ぎとられるものですから、
成長経済のさなかならまだしも、
いまのように商売の難しい時代には
匂いを嗅いでもいけない禁断の木の実なのです。
バブルのはじけたあとにひどい目にあった人で
辛じて倒産を免れた人なら、
いまどきまた同じ愚をくりかえす人は
恐らく1人もいないでしょう。
ですから金利の上げ下げには見向きもしないし、
従って倒産を気遣う立場にもいない筈です。
気遣うとすれば、店を閉めるか閉めないか、
閉めるとすればいつ閉めるか
ということじゃないでしょうか。


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2009年2月28日(土)

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