第3255回
日本文化の大半が舶来品です
いま私は雲南省の普洱茶(プーアール茶)の産地のド真ん中で、
普洱茶の原料になっている大葉の茶の葉を使って
日本茶をつくる実験にとりかかっています。
日本茶の作り方と普洱茶のつくり方には違いもあるし、
どちらがすぐれているかについては意見も当然、
分かれていますが、なぜそれをやるかというと
将来不足すると見込まれている日本茶の供給を
中国からやるためです。
お茶の渋味をおとすために日本人が考えたプロセスを、
これから製造する日本茶だけでなく、
普洱茶の製造にも応用すれば、
また別の普洱茶ができるかも知れないし、
一番高い普洱茶よりも一番安い普洱茶を
改良するきっかけになれば、
何百年も続いてきた中国茶の味に
新風をもたらす可能性もあり得ると考えています。
将来の日本茶の供給不足を補うためにも、
また将来の値上がりにブレーキをかけるためにも、
産地の多角化は時代の要求と言っていいのではないでしょうか。
しかし、そのためには茶の葉の生産や改良をする人も、
また摘んだ茶の葉の加工製造をする人も
日本の外へ出る必要があります。
それが日本にいる人たちの需要を充たすことになるだけでなく、
もしかしたら日本人の生産技術を
世界に拡げるきっかけになるかも知れません。
お茶だって元を言えば、
中国から日本にもたらされたものだし、
抹茶に至っては唐の時代に流行して
唐朝に留学した坊さんたちが持ちかえって
ずっと受けつがれて今日に至ったものです。
うちの家内がはじめて香港から私について東京に来た時、
茶の湯の会に招待されて
「中国に茶道ってありますか」ときかれ、
「ありません」と答えて私に笑われたことがあります。
抹茶だって、ラーメンだって元を言えば、
中国から日本に渡ってきたものです。
それが日本で温存され、改良されて
日本の食文化を代表するようになったのです。
缶コーヒーとインスタント・ラーメンだけが
日本人の発明したものだと年末の紅白歌合戦で
「羞恥心」というグループが歌っていましたが、
きいていて思わず笑いだしてしまいました。
何も缶コーヒーだけではないのです。
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