第3222回
中国もいよいよオリジナルの時代へ
カメラとミシンのコピーから
日本の経済成長ははじまったのです。
だってバイヤーと呼ばれた西洋人が
ライカやローレックス、
それにシンガーミシンを持ち込んできて、
「これと同じ物できないか」
「うまくできたらこのくらいのお金は払うよ」
と誘われてはじめたのが日本の物づくりなんですから。
ですから「日本人は猿真似」
「メイド・イン・ジャパンは安かろう・悪かろう」
が世界の常識だったのです。
そこからはじまって日本人は工夫に工夫を重ね、
素材や賃上げを克服するためにコスト・ダウンに力を入れ、
またあまり修理をしないですむ耐久製品をつくり出して
世界中から高く評価されるようになったのです。
私は高度成長がはじまった時から
バブルでピンチにおち入り、
そこから何とか立ち直って現在に至るまで、
この目で見、ずっとつきあってきたのですから、
中国のやっていることを笑いとばすわけには行かないのです。
いまの中国で起っていることは
昭和39年に日本を襲った戦後最大の不況より
もっと一段とスケールの大きなものですが、
このピンチから脱け出すプロセスは
中国の物づくりが他国のコピーからオリジナルに発展して行く
またとない機会でもあるのです。
できるか、できないかと言った生やさしいことではなくて、
できなければ「次はアジアの時代」という時代は来ないのです。
これから中国は労働力の生産性をあげることと、
国内市場を対象に高い品質の商品を提供する必要に迫られます。
世界最大の国内市場があるのに、
それをうまく立ち上げることができなかったら、
それこそ「眠れる豚」に逆戻りということになります。
さしあたりは景気振興のために
公共投資と国内消費の奨励からスタートするでしょうが、
中国は成長中の世界最大の消費市場を持っているのです。
工業の発展によって消費人口がふえるだけでなく、
農民の所得拡大がそのうしろに控えています。
そんなことできるものか、と
身構える日本人は多いでしょうが・・・。
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