第3186回
大陸に背を向けて経済成長は停滞
2000年に台湾の総統に当選すると、
陳水扁はすぐ私のところへ電話をかけてきました。
一度、総統府まで来てほしいと言うので、
予め連絡をとって総統府まで本人を訪れました。
私は全部で16項目のことを簡単にメモに書いて
これだけは是非やって欲しいと意見を出しました。
先ず政治的な目標よりも、
経済に重点をおいた政策に力を入れること。
中国大陸との三通を
なるべく早い時期に実現する方向に持って行くこと。
また原子力発電は既に工事が進行中だから、
中断すると莫大な損失を招くだけでなく、
将来、不足する電力を賄い切れなくなるから、
野党時代の反対主張は引込めて、
うまく行ったら自分たちの功績にし、
事故を起したら、国民党のせいにすれば良い等々、
いずれも具体的にやれることを列挙しました。
三通については双方の飛行機の乗り入れが困難なら、
キャセイ航空に任せようかとご本人は出任せに私に答えましたが、
私は政治が遅れているだけで
経済は既に90%方、統一しているのですよ、
双方ともちゃんとした飛行機を持っているのに、
どうして第三国の飛行機に任せる必要があるのですかと
その場で反論しました。
それからしばらくたって、
私はもう一回だけ総統府に顔を出しましたが、
もう私の出る幕はないと観念してしまいました。
結局、私が提出した16項目のうち実現したのは1つだけで、
それは土地の増値税を時限立法で半減するという法律改正でした。
台湾では政府が決めた地価基準があって、
地価があがると差額に対して
累進税率で課税するシステムになっています。
それを重税率のまま据え置くよりも、
半減すれば土地の取引もふえるし、
それが経済活動を刺激するから、
税収は減らずに却って増収になる可能性もある
というのが私の意見です。
16項目のうち1つだけが実現して、
あとは「中国は中国、台湾は台湾」
というスローガンを表に出して、
大陸に背を向ける政策を8年も続けたのです。
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