第3184回
ゴルフ場を持っていてもゴルフをやらないわけ
いま私は昆明の翠湖賓館という5つ星ホテルで
窓の外を戯れ飛ぶ白い鴎を眺めながら、
この原稿を書いています。
毎年、シベリアから寒気を避けて飛んでくる白い鴎が
翠湖の水面を雪のように埋めつくすのは12月になってからですが、
1ヶ月も早く飛んで来ているのを見ると、
ことしは寒い冬になるぞということでしょう。
人間より渡り鳥の方が天候の変化に対してはずっと敏感なのです。
昆明に来る前の日まで、私は台北におりました。
どうして台北にいたかというと、
私は桃園飛行場のすぐそばに
永漢ゴルフクラブというゴルフ場を持っていて、
1年に1回やるゴルフ・コンペの
賞品の授与をやる恒例になっているからです。
去年は所用があって欠席したので、
続けて2回も欠席すると、病気でもしているのではないか、
もしかしたらもう死んでしまったのではないかと
思われかねないので、大陸に渡る前に、
台北経由のスケジュールを組んだのです。
私はゴルフはやりません。
ゴルフ場のオーナーをやっていて、
ゴルフをやらないのは私くらいなものでしょう。
なぜかというと、ゴルフをやっているだけのヒマもありませんが、
ゴルフが上達する自信もないからです。
ゴルフ場がつくれるだけの土地を持っていたので、
うちの息子に背中を押されてついゴルフ場をつくったのですが、
ゴルフ場できたての頃はうちのスタッフたちにまじって
コースを何回かまわりました。
でも運動神経に恵まれていないこともあって
一向に上達しなかったのです。
どうしてかというと、私のように苦労をいとわない人間は
人より何回余計にクラブを握っても一向に苦にならないばかりか、
むしろ人より働いたことに満足感を抱いてしまうからです。
おかげでクラブを握ったこともなかったうちのスタッフたちが
見る見るシングルの腕前になるのを脇で見ながら、
遂にゴルフをやらないゴルフ場のオーナーとして
とり残されてしまったのです。
永漢ゴルフ場で私に残された唯一の仕事は
コンペの勝者に賞品を渡すだけになってしまったのです。
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