中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3006回
事業の寿命は10年という時代に

私はアジア中をとびまわっているので、
日本に帰ってくると、
日本で起っていることの新しい変化がいやでも目につきます。
私たちの世代に活躍した人たちは、
一世を風靡した人でも事業に失敗してあえない幕をとじたり、
何とか無事に勤めあげた人でも
あの世から迎えが来たりして
まだ元気で動きまわっている人は
数えられるほどになってしまいました。

そうして見ると、
一人の人間として力一杯働ける期間は大体30年ですが、
事業の寿命も30年もったらいい方だということがわかります。
30年もたずに事業の方が先に瓦解してしまった人は
晩年を不如意に送ることになりますが、
寿命も事業も30年もった人でも、
さすがに寿命の尽きる頃になると、
事業も整理の時期にかかってしまいます。
事業を大きくした人ほど
整理にも莫大な資金とエネルギーを要求され、
決してはたの人が見る程楽な老年ではありません。
デパートでもスーパーでも、また生産事業でも、
30年もたつと事業そのものが錆ついて
動きがとれなくなってしまうのです。

私たちの年代はまあ、それでいいのですが、
更にワン・ジェネレーション下になると、
寿命は延びるのに、事業の寿命は逆に短命になって、
最近のお金の動きを見ている限りでは、
30年が10年まで縮まったのではないかという印象を受けます。
デパートやスーパーだってこれからリニューアルをして
はたして10年もつでしょうか。
とりわけM&Aの対象になるような既存の事業の建て直しとなると、
予想通りの建て直しができるよりも
建て直しに失敗する例の方がふえて
それが表面化する周期が10年毎にやってくる感じです。
レストランとか、コーヒー・ショップのような
サービス業に至っては3年もったらいい方ではないでしょうか。

その度にもう一ぺん出直しということになったら、
事業に対する対応の仕方も、財産の運用法も、
人としての生き方も
抜本的に考えなおさなければならなくなります。
いままさにそういう時期にさしかかったぞ
と実感しているところです。


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2008年6月2日(月)

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