第2999回
お金より人が働きに出て行く時代
この50年の間に、日本人はしっかり財産を貯め込みました。
一世帯当りは僅かでも、
日本人の平均所得は世界のトップを行くものですから、
不況の中をくぐっていても合計するとかなりの財産です。
資源も資本もない国で
どうしてそういうことができたかというと、
工業化に成功して工業製品をつくる過程で
付加価値を生むことに成功したからです。
成長がストップして沈滞が続いているように見えても、
トヨタやホンダは
アメリカのビッグ・スリーを追い越して空前の利益をあげているし、
反対にビッグ・スリーが大赤字になって再建に四苦八苦しています。
政府はどちらも大赤字で
そのうちに身動きができなくなることはどちらも同じですが、
アメリカ人が稼いだだけ使ってしまうのに比べて、
日本人はそれぞれの家庭なりに貯蓄に励んでいるので、
自国内に有望な投資対象がなくなっても、
小金なりに投資資金は持っていますから、
その資金を日本以外の海外投資に向けることができます。
中国投資もその一つですが、
日本国中がそういうことに気づけば、
これまで銀行に預金していたお金が
日本の銀行の手を通じて外国銀行の手に渡り、
逆に日本も含めて世界中に投資されているのを、
自分たちの手に取り戻して
自分たちが直接、海外に投資することが
だんだん可能になる方向に動いています。
しかし、日本人の本当の財産は
付加価値の創造によってつくり出されたお金よりも、
そうした付加価値を生み出す才能の方にあると私は見ています。
物づくりをする上の完璧主義、サービス精神、
そして、責任感は1日にしてできあがったものではありませんが、
それが工業生産に向けられた場合、
富の創造という結果を生んだのです。
それは日本人の一人一人の身についた財産ですから、
それをグローバル化の時代にどうやってフル運転させるかが
日本人のお金がどうやって世界中で運用するかよりも
もっと大切だし、
また多くの収穫をもたらす筈だと私は見ています。
お金より人が働きに出て行く時代が来たのです。
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