中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2914回
江副浩正「不動産は値下がりする!」ご一読を

日本のバブルは不動産と株の双方に同時に発生し、
はじける時は先ず株からはじまり、
最後まで下げ渋ったのは不動産でした。
株には毎日、相場が立ち、その値段で換金できたので、
株を担保にお金を借りた人は
まだ傷の深くならないうちに返済することができたのです。
不動産はその名の通り少しも動じなかったので、
ずっと換金することができず、
不動産を担保にしてお金を借りた人たちを
奈落の底まで突き落してしまったのです。

そういういきさつがあるので、
かつての「土地神話」は
全くのナンセンスだと考えを改める人もあれば、
いやいや、そういう目にあわされたのも事実だが、
土地以外に頼りになるものがあるかと改宗を拒み続ける人もいます。
とりわけバブルの整理が一段落して
再び大都会に人口が集中して土地の値上がりがはじまると、
たちまち神話の世界に復帰してしまう傾向には
根強いものがあります。

そういう土地神話復活の中にあって、
かつてリクルート事件の主役を演じた
リクルートの創業者江副浩正さんが自分の信念に従って
「不動産は値下がりする!」という本を書きました。
当初は業界の雑音を怖れて
親しい人だけに配る私家版だけを印刷して、
私も送っていただいた人の一人で、
すぐに拝読しただけでなく、
親しい友人たちの間でも廻し読みさせていただきました。
本当にその通りになるかどうかについては
皆さんがご自分であれこれ検討して
結論を出すよりほかありませんが、
実情に詳しい先輩プロの意見として
ぜひ一読していただくことをおすすめ致します。

私家版だけでなく、
多分、読んだ人の中で薦める人もあったのでしょう、
昨年暮れに中央公論新社の中公新書ラクレの1冊として出版され、
ベスト・セラーズの仲間入りをするようになりました。
何しろ江副さんが私の家に食事に見えたのは1969年のことで、
もう39年も前のことです。
以来、成長経済の先頭を疾走した
チャンピオンだった人の不動産の見方ですから
これから理財を志す人にとってはとても参考になる本だと思います。
(中公新書ラクレ 定価本体740円+税)


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2008年3月2日(日)

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