第2850回
ミシュラン東京版を見て感じたこと
ミシュランの東京版が出版されたのは
私がベトナムを旅行中のことでした。
同行者の中には
私がミシュランの愛読者であることを知っている人がいて、
三つ星にあげられた8軒の店の名前をメモにとって
私に渡してくれました。
それを見て私はかなり驚きもし、拒否反応も覚えましたが、
恐らくパリのことをよく知ったパリジェンヌも、
パリのミシュランを見て、
私と似たような反応と拒否反感を示すんだろうねと
改めて思いかえしました。
ヨーロッパの食べ歩きはいまから35年前、
無国籍で海外旅行さえできなかった私が
パスポートを手に入れてどこにでも行けるようになってから、
20回以上も毎年のように続けてきましたが、
その頃からガイド・ブックとして
肌身離さず持ち歩いたのがミシュランです。
途中でゴー・ミヨを参考にしたこともありますが、
三つ星のレストランに行くべくやとったハイヤーの運転手に
「あれはお金をもらうと星をふやす会社ですよ」
と言われてやめてしまいました。
ということは
ミシュランなら依怙贔屓がないということになりますが、
そう思うのは
自分がパリやフランス料理の実情をよく知らないからで、
フランス料理に対して一言あって然るべき人なら、
恐らくミシュランの星のつけ方に
文句をつけないでいられるわけがありません。
まして自分がこの店が一番と思う店に一つ星しかなくて、
どう考えても星をやるべきでない店に三つ星がついていたら
ガマンができるわけがありません。
今回の東京版には三つ星のレストランが8軒あげられていますが、
私がこれなら仕方ないなあと承服できるのは3軒だけで、
あとの5軒の中には名さえ知らない店もあれば、
一つ星でもどうかなあと首をかしげたくなるような
料理のレベルの低い店もあります。
でも東京のことは何も知らない外国人や
料理に無知な味オンチなら、
やっぱりこれを見て行って見ようかということになるのでしょうね。
改めて自分がパリの田舎者だったことを
思い知らされた東京版でした。
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