中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2845回
財産をドル建てで持たない工夫を

ことし最大のハプニングは何と言っても
サブプライム・ローンの失敗による世界的な金融不安です。
金融不安と言っても、
産業界全体がピンチに追い込まれたわけではなく、
アメリカの景気を持続させるための不動産ブームが
飽和点に達したために
融資した資金が回収不能におち入っただけのことで、
被害は専ら金融機関に限られております。
ただ金融機関の元手も預金者から預かった物か、
預金者に出資させたものか、
あとは金融機関の持つ含み資産ですから、
十年前のアジア金融危機のように、
タイや韓国の通貨をまき込んだ
国家レベルの通貨危機ではありません。

従ってIMFの出番にはなっていませんが、
銀行の損害がはたしてどこで底を打つのか、
まだ当事者の間でもわかっていません。
アメリカでは借手の金利支払いを
5年先まで延ばす救済案も出されているようですが、
もしその間にインフレでも起って不動産がかなり値上がりをすれば
損害は思ったより少くてすむことも考えられます。
しかし、
反対にドル安が進行して、
通貨としてのドルの指導的な役割が後退したら、
世界経済が混乱におち入ることも考えられないことではありません。
どちらにしても、
ドル安は避けられない方向なので、
私たちとしてドル安を前提とした投資戦略を考えるところまで
追いつめられたことになります。

ドル安になる時は、
自分の財産をドルで持っていると、
目が醒める度に財産が減ります。
香港ドルは米ドルにペッグ制で釘付けになっていますから、
香港ドルで持っていても同じことが起ります。
いずれ香港政府も
眞剣になって対策をとらなければならなくなるでしょうが、
考えられる唯一の可能性は人民元にリンクする形でしょう。
その間をどうするかということになると、
香港ドルで投資する中国株の財産は人民元で評価されますから、
とりあえず人民元にペッグすることになります。
持っている財産は米ドルの影響の少い所に避難することです。


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2007年12月24日(月)

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