中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2731回
不況下のインフレが日本に定着?

「アメリカがそんなに人民元の為替レートにこだわるのなら、
中国が手持ちのドルを売ったらいいのではないか」
と人民銀行の関係者がアドバルーンをあげたら、
ブッシュ大統領がびっくりして、
「それは思慮のない発言だ」
と反駁したと新聞が報じていました。
途端にかって日本でも
橋本首相がそういった意味の発言をしたことを思い出しました。

何にしろアメリカは自分たちで物づくりをするのをやめて、
人件費の安い国でつくられた物を輸入し、
輸入代金はドルを印刷して払い続けてきたので、
莫大なドルが外国人の手に渡り、
そうした黒字国の財産になっています。
ドルの手持ちをしている国々は
そのドルでアメリカの国債を買ったり、
アメリカの基金に投資を任せていますから、
ドルが値下がりすると自分たちも損をする立場にあります。
そうした共通の利害が
ドルの値打ちを長期にわたって支えてきましたが、
いつかはその支えがきかなくなる時が必らず来ます。

でも明日にもそうなるというわけでもありませんし、
そこに至るまでの過程で、
何回も陷し穴に足を突っ込むことが起ります。
今回のニューヨーク発株価の大暴落も
そうしたづっこけの1つでしょうが、
そういうことをくりかえしているうちに、
世界中がドルと無理心中をさせられることを怖れて
ドル離れに動くようになります。
ヨーロッパは既にユーロ圏を確立し、
ドル離れがかなり進んでいますが、
日本人にはアジア経済圏という認識があまりないし、
中国や韓国やアジアの国々を見下した頭の持主が
指導者の中に多いので、
アジア経済圏への動きはユーロに比べてかなり遅れています。
もしかしたら、
中国がアジア経済圏の主導権を握るようになるまで、
日本は知らん顔をするのかもしれません。
ドルが落ち込んだ分だけ円高になるようなことが続けば、
円高日本で商売をするのはいよいよ難しくなります。
不況下のインフレが
日本に定着する可能性が強くなったと思いませんか。


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2007年9月1日(土)

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