中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2717回
日本の官僚はアジア一優秀だったが

敗戦によって、日本はマッカーサーから
軍閥と財閥を解体されてしまいました。
また既存の政治家たちもパージにあって、
選挙に立候補できませんでしたので、
イヤでも新人に代わらざるを得ませんでした。

それでも日本がバラバラになってしまわないですんだのは、
日本の官僚制度が意外にガッチリできていたからです。
政治家は権力者の顔色を見て動く人が多いのに対して、
行政は学閥ががっちり抑えていて、
アジアのどの国も及ばないくらい法律が遵守されていたからです。
ヤミ屋の横行していた混乱期は別ですが、
少し世の中が落着いて、経済の秩序が正常化すると、
占領下でも生き残った官僚システムがフルに動くようになって、
日本はさながら官僚王国として
成長経済を謳歌するかに見えました。

この時期にたまたま私は
中央公論の巻頭論文を書く常連の一人になったので、
反撃の多いのを承知の上で
「官僚興国論」を執筆したことがあります。
はたして藤原弘達さんをはじめ、
官僚亡国を固定観念としている人たちの袋叩きにあいましたが、
一流大学の出身者が喜んで中央官庁に就職をする限り、
日本のお役所は安泰だと思ったのです。
日本中で一番頭がよくて、とてもよく勉強する人たちが
日本の経済政策を担当している限り、
しかもアジアのどの国に比べても汚職の少い日本で
成長経済が見当違いの方向にズレてしまう心配は先ずないと
私は信じて疑わなかったのです。

日本が敗戦後、僅か30年で
世界中から注目される経済大国にのしあがったのは、
日本人のチーム・ワークのよさが大きく物を言っていますが、
そのバトンを持って先頭を走ったお役人さんたちの
頭のよさと生真面目さによるものと
私はいまだ高く評価しております。
そういう人たちが次のステップで議員の席の大半を占領したとしても
決して不思議ではありません。
しかし、それが世襲制に変わったところから、
日本の足踏みと後ずさりがはじまったのです。


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2007年8月18日(土)

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