中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2672回
米を売るよりチャーハンを売れ

中国はいま工業化によって金持ちへの国に向っていますが、
そのベースにあるのは農業です。
日本もかってはそうでした。
工業化するタイやベトナムに対しても同じことが言えます。
ですから私たちには農業に対する懐古趣味が根強く残っています。
私のような地方の都会生まれで、
土に親しんだのは戦争中に農家に疎開した時だけという人間にさえ
農業を発想の原点とする考え方が強く残っています。

しかし、農業は付加価値が低く、
しかも豊作になると穀物でも野菜でも逆に値下がりして、
戦前から豊作貧乏という悲劇をくりかえしてきました。
薬九層倍のクスリは売れれば大儲けになりましたが、
売れなければつくらないだけのことで、
薬屋の生活をおびやかすには至りませんでした。
ところが、田畑は耕やさないと小作料も払えませんから、
農民は手抜きをすることができません。
百姓百層倍といって穀物は一粒が百粒になりましたから、
豊作になると穀物が大暴落してひどい目にあわされました。
いまも農作物にはそうした相場の動きがそのまま残っているので、
農業で大成功をする可能性は低く、
農作物をベースとして金の儲かる商売と言えば、
農作物の加工、
即ち蒙牛とか康帥溥とか、
加工食品を全国的スケールで大量販売する食品加工業と
相場がきまっています。

蒙牛も康帥溥も小さな企業からスタートしましたが、
加工をすると新しい付加価値を生み出すので、
大企業化する可能性を持っています。
但し、それは農作物の付加価値ではなくて、
加工することによって生み出される新しい付加価値ですから
食品を売るなら
「米を売らずにスシか握りかチャーハンを売れ」
ということになります。
この原則に従えば、
味の素やキューピーやカゴメからはじまって、
レストランのチェーンに至るまで、
中国に似たような新しい食べ物の分野の開発が残っていることになります。
それを観光名所の名物の改良からはじめようじないか
というのが私の新提案です。


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2007年7月4日(水)

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