第2647回
一方的貿易黒字を想定していない通貨制度
日本で一方的に輸出がふえ続けた時、
日本国内で何が起ったかを少し復習して見ましょう。
輸出業者は売上げ代金を主としてドルで受け取ります。
メーカーや関係業者は従業員の給料から材料費まで
大半の経費を円建てで支払わなければなりませんから
受け取ったドルを取引銀行で円に換えてもらいます。
取引銀行はそのドルを日銀に持ち込んで円に換えてもらいます。
日銀は外貨を準備金として
それに相当する円を発行できる仕組みになっていて、
この規定に制限はありませんから、
輸出が一方的にふえた分だけドルを受け入れ、
無制限に円を発行できます。
恐らく日銀が制度を決めた時、
一方的な輸出過剰になることは想定の中になかった筈です。
貿易収支が赤字になって
通貨危機におちいることは考えられたとしても、
外貨の大量流入によって円の洪水になることは
誰一人予想しなかったことです。
それが現実に起って見ると、
何しろお金の儲かる出来事ですから、
国中がホクホクで、輸出の制限など誰の頭の中にもなかったし、
国中が円の大洪水になると予想する人はいませんでした。
それが現実に起って見ると、
銀行にお金が溢れ、それを取引先にでも使ってもらわなければ、
銀行は預金利息を払わされるだけで商売が成り立ちません。
そこで、いままでは
お金を借りに来る顧客に高姿勢で臨んでいたのが一転して
「お金を借りて下さい」と
取引先のもとを訪ねてまわるようになったのです。
但し、誰にでも借りて下さいと呼びかけたわけではありません。
お金があり、返済能力のある人が目標にされたのです。
とりわけ土地や株が
資産インフレによって最も値上がりのする投機対象でしたから、
地主と株持ちが狙われました。
この時、真っ先にお金を借りて土地や不動産を買った人は
それこそ何十倍にもなるようないい思いをしたでしょうが、
堅実経営をモットーとする人たちが
その誘いに乗るわけがありません。
それが次々と起る値上がりを見てガマンができなくなって
最後になってとびついたところで、
バブルが消えてなくなってしまったのです。
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