中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2637回
ベトナム人には融通性があります

ベトナムにはこれで5回、足を運んでいますので、
共産化したあとのベトナムがどういう経過を辿ったか、
またどういう方向に動こうとしているのか、
私なりの見方があります。
ベトナム人はロシア人に比べて、
もっとずっと融通性がありますので、
ロシアで生まれた教条的な共産主義を
そのまま信奉するような国民ではありません。
ですからケ小平の中国と一戦交えたかと思ったら、
アメリカとゲリラ戦を展開することもためらわず、
では南ベトナムを手中におさめたら、
アジアで最もソ連に近い動きをするかというと、
農業国家であるにも拘らず、
工業化への道をまっしぐらに走りはじめています。

一時期、中国と「歯には歯を」
の戦争をやったせいもあって、
「敵の敵は味方」
という考え方で、
台湾とは他のどこの国とも深くつきあうようになり、
台湾企業がたくさん進出しています。
3年前に私がホーチーミン市を訪問した時も、
私が工業団地を訪問したいと申し出たら、
1番スケールの大きな工業団地の開発している
台湾企業のトップの人がわざわざ台湾から現地まで足を運んで
私の案内をしてくれたことがありました。

当時の私の認識では、
ベトナムの平均賃銀は月に30ドルから多くて50ドルで、
台湾や日本や韓国で中国に持って行っても
コスト・ダウンの効果があがらない労働集約的な産業、
たとえば、
タオルとか靴下などの低価格の繊維加工業の移転先でした。
当然のことながら、
付加価値の急増は期待できませんので、
証券取引所も10数社しか上場企業がなく、
証券取引所の建物も、
「これが証券取引所か」
とこちらがびっくりするほど貧弱なものでした。
「本格的な証券ブームにはまだまだだなあ」
という感想を抱くと共に、
「新しい道をひらくなら、
こんな時からはじめるべきだなあ」
と思ったのです。
それが最近はベトナムの株式ブームをはやす声を
よくきくようになったために、
もう1度、自分の目で確める必要を痛感するようになったのです。


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2007年5月30日(水)

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