第2633回
工業化に向いた国民性が要求されます
富をもたらす最大の能力は付加価値を創造する能力です。
米をつくったり、魚をとってきたり、
地下から石油をくみ出してきたりするのも
広い意味での富の創造でしょうが、
人類に画期的な富をもたらしたのは
何と言っても工業化による付加価値の創造でしょう。
資本主義という社会制度をもたらした工業化は
ヨーロッパの、それも白人たちの間からはじまったものですが、
国全体を工業化によって
貧乏国から一躍して世界の富裕国に変え、
「資源がなくても金持ちの国になれるぞ」
という実験に成功したのは、
敗戦によって飢餓に瀕した日本でした。
日本がやったことは
世界中の資源貧乏国や資源があっても
工業の発達していない国に希望をもたらしましたが、
だからと言って、どこの国も日本と同じように
工業化に成功するわけではありません。
私は広い世界には、
資源があっても工業化に成功できない国もあれば、
資源の開発と併行して工業化に成功できる国と、
全く資源に恵まれていなくとも、
工業化に成功できる国とがあると見ています。
日本やそれに続く韓国や台湾やシンガポールは
既に成功した実績を持っていますから、
いちゃもんをつけられるいわれはないでしょう。
問題は中国に続くブラジルやロシアやインドが
はたしてどうなるかです。
インドはソフトの分野では
世界のトップと肩を並べるようになりましたが、
工業団地の開発は遠く中国に及ばないし、
高速道路では牛とスズキの小型車が仲好く動きまわっています。
ロシアに至っては地理的にヨーロッパに近い分だけ
早くからヨーロッパナイズしていますが、
政府の権力が圧倒的に強いせいか、
言われたことを黙ってコツコツとやることはやりますが、
創意工夫に自発的に取り組む姿勢は残念ながら見当りません。
そういう風景を見たかったら、
むしろ東南アジアに行くべきです。
東南アジアでも回教圏はいささか尻込みしてしまいますが、
ベトナム、タイ、ビルマに一歩踏み込むと全然違います。
なかでもベトナムに一番陽が当りはじめた感じです。
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