中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2585回
土地ブームはまだ緒に就いたばかり

日本に貿易黒字が定着して円高がはじまった頃のことを、
いまの若い人はまだ生まれていないか、
生れていてもまだ子供だったので
よく知らないんじゃないかと思います。
それまではちょっと景気がよくなって、輸入がふえると
すぐにも貿易収入が大赤字になると、
たちまち金融引き締めがはじまって、
企業は金ぐりに四苦八苦したものです。

それが一転して銀行にいつもお金があまるようになると、
今度は後者の立場が入れ代わって
銀行の支店長さんが優良取引先を訪問して
お金を借りて下さいと依頼してまわるようになりました。
銀行からの借入金は利息のかかるものですから
大抵は設備投資に使われるものでしたが、
それを越えて押しつけられた借入金は
土地とか株式とか資産への投資にまわります。
日本の場合はそれが土地や株などにまわっただけでなく、
海外資産への投資にも大量にまわされました。
一頃は銀行がいくらでもドルを貸したので、
アメリカで不動産に投資をする企業がふえ、
日本の銀行も次から次へとアメリカの銀行を買収する挙に出たので、
私はカリフォルニア州が「第二の満州」になるのではないかと
錯覚を起したこともありました。

もちろん、過剰流動性による金あまりは
国内の方がずっと大きかったので、
株も大きく値上がりしましたが、
土地の値上がりはもっとずっと激しく、
青山通りの土地を例にとると
1坪300万円くらいだったのが
あッという間に1千万円まではねあがり、
それが息もつかずに更に上昇線上をハイスピードで駈け上がり、
あれよあれよと言っているうちに坪当り1億円まではねあがったのは
皆さんご承知の通りです。

いま中国で起っていることは、多分、
青山通りが100万円から300万円まで駈け上がる段階に似ています。
もし日本でかつて起ったことが中国でも起るとすれば、
上海の中心部でやっと
100万円から300万円まで駈け上がったレベルの動きと思えば
当らずとも遠からずでしょう。
今後、更にもっと大きな動きになるとすれば、
それはこれからやっとはじまるところだ、と私は見ています。


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2007年4月8日(日)

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