第2499回
中国企業の海外進出に新しいカントリー・リスク
いま莫大な外貨を使って海外で投資をしている中国企業は
大別して資源開発と工業生産に分けられます。
1番多いのは、もちろん、
将来の資源不足を見越して
いまから手当てをしておこうという動きです。
日本の石油産業は少数の例外を除いて、
外国企業が掘り当てた原油を買ってきて
精製して販売する事業に従事していますが、
中国の石油会社は自国で不足するとわかってから、
自国の周辺で石油の出そうなところには話をつけて、
ロシアからビルマ、タイ、ベトナム、
更にはアフリカやインドネシアにまで進出して共同で採掘したり、
利権を買ったりしています。
石油以外の鉄鉱石や石炭や非鉱金属に至るまで、
将来、必らず不足すると思われる資源産業にはお金を惜しまず
投資に力を入れています。
出資をしているのはいずれも上場会社ですが、
身にあまる莫大な資金の調達ができるのは、
政府が後押しをしているからです。
そのほとんどが株の大半を政府が所有している国営事業、
もしくはそれに準ずる株式会社です。
その資金を銀行が融資する場合でも、
倒産の心配はないし、金利は稼げるし、
その上、海外からのクレームを柔らげることができますから、
1石3鳥どころのメリットではありません。
資源に対する投資の場合は、
国と国との外交関係に大きく左右されますが、
レノボとか、ハイアールとか、
生産事業の海外進出ともなると、
先進国で先進国の人を使うことになりますから、
中国人というハンディの上に、
官僚的な非能率が大きなブレーキになる
2重のデメリットがあります。
いよいよ、これから中国企業の外国進出がはじまりますが、
そのプラス面だけで見ると、
大きなミスを犯す心配があります。
日本企業だって国内だけでやっていた間は
経営に注目すれば間に合いましたが、
イランだ、サハリンだとなると、
途端にカントリー・リスクが
事業の成否を大きく左右するようになりました。
中国株に投資する場合も、
中国のカントリー・リスクよりも、
ダブル・リスクに気をつける必要が出てきました。
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