第2456回
「電通鬼十則」をご存じですか
中国の広告会社のトップの人たちに
アドバイスをする立場になったので、
俄か勉強をしなければならなくなりました。
すぐ本屋に行って広告と関係のある本を
片っぱしから買い漁りました。
前に牛を飼う牧場をつくった時もそうでしたし、
人に頼まれて鰻の養殖に手を出した時もそうでした。
クロード・ホプキンスの「広告でいちばん大切なこと」を
皆さんにおすすめするきっかけになったのも、
必要に迫られてのことです。
そう言えば、戦後、小説家になるべく
香港から東京に舞い戻った頃、
電通の社長の吉田秀雄さんが
「電通鬼十則」というのを発表して
評判になったのを覚えています。
書店の文庫本のところを見たら、
植田正也さんの書いた
“電通「鬼十則」”という本が並んでいましたので、
これも袋の中に入れてもらい、
久しぶりに鬼十則に接することができました。
(PHP文庫、495円プラス税)
もう半世紀以上も前のことになりますが、
その頃、私は自分の原稿を
雑誌社に売り込むのに死物狂いになっていましたので、
スラスラと目を通しただけで、
鬼十則の真髄にまでふみこめませんでしたが、
今度、改めて読んで見ると、
これは広告セールスマンの心得なんてものではなくて、
何もないところから大事業を築きあげて行こうとする野心家が
自分に言いきかせる戒めなんですね。
広告業は頭が資本で、
何もないところから夢を現実に変えて行く仕事ですから、
これくらい全知全能を傾けないと、
形にもならないし、人に信用してももらえないのです。
たとえば
第一条 仕事は自ら「創る」可きで、與えられ可きでない。
第二条 仕事とは、先手先手と「働き掛け」て行くことで
受け身でやるものではない。
第三条 「大きな仕事」と取り組め、
小さな仕事は己れを小さくする。
第四条 「難しい仕事」を狙え、
そして之を成し遂げる所に進歩がある。
第五条 取り組んだら「放すな」
殺されても放すな、目的完遂までは。
以上どれを見ても
無から有を生もうとする人の心掛けだということがわかります。
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